その他の訴訟をしないでお金を取り戻すための法的手続き

貸金の返還を巡って相手の債務者と争いがある場合には、支払督促や少額訴訟や通常の訴訟等の方法により争うしかありませんが、訴えを提起することにより、相手との関係性が完全に壊れてしまいます。
債務者とは争わずに穏便に貸金返還についての合意をする方法としては、公正証書を作成する他に、以下のような手続もあり、訴訟手続に比べると手続が簡易なため、法律の専門家に頼らなくても、比較的簡単に手続を進めていくことが十分に可能です。
民事調停~平和的解決手段その1
民事調停は、訴訟と異なり、裁判官の他に一般市民から選ばれた調停委員二人以上が加わって組織した調停委員会が当事者の言い分を聴き、必要があれば事実関係も調べ、法律的な判断をもとに意見調整をし、解決案を提示し、当事者の合意を得ることを目的とする実情に即した解決を図る制度のことです。
民事調停とは、訴訟ほどには手続が厳格ではないため、誰でも簡単に利用できる上,当事者は法律的な制約にとらわれず自由に言い分を述べることができるという利点があります。
手続は非公開で行われ、当事者が直接顔を合わせて協議をする方式ではなく、当事者の一方ずつが交替で調停期日に呼ばれて話し合いをする形式で進められていきます。
話し合いによって当事者が合意に達した場合は、その合意は訴訟の場合の判決と同じ効力を持つことになります。
また,合意による解決であることから,相手方の任意の履行が期待できるというメリットもありますし、合意どおりの支払がなかったときには、強制執行をして財産を差し押さえることも可能です。
ただし,合意に至らなければ,調停は不成立となります。その場合には,他の訴訟手続等で解決を求めることになります。
公正証書を作成する場合と比べてのメリット
- 当事者同士で交渉する事なく、調停委員が代わりに交渉をしてくれる
- 公正証書を作成するより費用が安く済む
- 100万円未満・・10万円ごとに500円
- 100万円以上~500万円未満・・20万円ごとに500円
- 500万円以上~1000万円未満・・50万円ごとに800円
- 収入印紙・・債権者1社につき300円
- 切手…債権者が1社の場合1450円(債権者が1社増えるごとに+250円)
- 法律の専門家に頼らなくても十分に当事者たちだけでも手続を進めていくことができる
公正証書を作成する場合と比べてのデメリット
- 債務者はブラックリストに載ってしまうので、信用情報機関の「事故情報」として、債務完済後約7年間登録され、この間は原則借金やローンができなくなる
- 調停委員を納得させられないと成立しにくい(具体的な数字でキチンとした返済プランを立てないと、調停委員が納得しない)
- 3年以内に、返済する必要がある(特別な事由があれば5年以内も可)
- 成立するまでの法律上の遅延損害金を加算される
- 和解成立迄に最短でも3ヶ月以上くらいの時間がかかる
即決和解(訴え提起前の和解)~平和的解決手段その2
即決和解とは、当事者間の協議で合意に達している場合に、裁判所に関与してもらい、合意をした内容に裁判所のお墨付きを得るための制度です。
この申し立ては、相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に行います。
通常は裁判を起こした後に和解が行われますが、この即決和解は、訴訟をする前に、ほぼ一回のみの期日で争いについて合意ができてしまうといった特色があり、「訴え提起前の和解」とも呼ばれています。
裁判上の和解であるため、和解調書が作成され、裁判の判決と同じように債務名義となりますので、これに基づいて強制執行をして財産を差し押さえることも可能となります。
公正証書を作成する場合と比べてのメリット
- 公正証書よりも費用が安い(申立手数料2,000円+裁判所から関係者への郵便費用)
- 法律の専門家に頼らなくても十分に当事者たちだけでも手続を進めていくことができる
公正証書を作成する場合と比べてのデメリット
- 裁判所に出頭しなければならないため、債務者が抵抗を感じ、和解がまとまらないこともある
- 申立てから和解成立まで最低でも1~3ヵ月程度はかかるので、その間に債務者の気が変わってしまう恐れがある。