トラブル防止のための子供について決めておくべき事柄

満20歳未満の子供の親権
面接交渉権
子供の戸籍と姓(氏)
子供の親権
満20歳未満の子供がいる場合は、親権者を決定しなければなりません。
必ずどちらか一方を親権者と決めておかなければ、離婚届が受理されないので離婚をすることはできません。
どちらが親権者となるのか解決がつかない場合は協議離婚はできず、家庭裁判所の調停に委ねることになります。
親権は、一旦決定したら、後になって変更する際には家庭裁判所の許可が必要となりますので簡単には変更はできないようになっています。
また、離婚後は、親権者の変更を一切申し立てない旨の合意をしていても法律上「無効」となります。

なお、「親権」は大きく「①財産管理権」と「②身上監護権」とに分けられます。この「①財産管理権」と「②身上監護権」とをセットで「親権」といいます。
「①財産管理権」とは、子供の財産を管理し、子供の法律行為の代理を行うこと等の子供に対しての権利と義務のことをいいます。
一方、「②身上監護権」とは、子供の身の回りの世話をしたり、躾や教育を施したりすることに関わる子供に対しての権利と義務のことをいいます。
通常は、特に定めをしない限りにおいては、子供を引き取るほうの親が親権者となり、「①財産管理権」と「②身上監護権」の両方を行使することになります。
しかし、「どちらが子供の親権を持つのか」で揉めている場合の解決策として、①と②を分離してどちらか一方だけを行使することも可能です。
この場合は「①財産管理権」を持つほうを親権者、「②身上監護権」を持つほうを監護者と言いますが、「離婚届」には「監護者」を記入する欄がないため、親権者と監護者を別々に定めた場合には、必ず、「離婚協議書」等の書面にしておくことが後々のためでもあります。
cf.親権を決定する際の基準について
親側の事情
- 養育能力
- 家事・育児の能力、健康、精神状態、性格、生活態度、経済状態、環境、子に対する愛情の度合い
- 看護補助者の有無
- 子供の世話を手伝ってくれる人がいるか
- 経済力
- 資産、収入、住居等
- 離婚責任の有無
子供の側の事情
子供の年齢 | 親権者 |
---|---|
0歳~10歳 | 乳幼児期には、母親の世話や愛情が必要とされ、母親が親権者となる場合が多い |
10歳~15歳 | 母親が親権者となる場合が多いが、子の心身の発育状況により子供の意思を考慮に入れて決定することもある |
15歳以上 | 子供の意見を完全に尊重して決定をするべき |
子供と会って交流をする権利

子供と離れて暮らすことになる親には、離婚後でも子供と会ったり、連絡を取ったりできる権利があります。これを「面接交渉権」といいます。
「面接交渉権」は法律上の条文はありませんが、親として有する当然の権利として認められているものであり、また、子供にとってももう一方の親と接するための権利を保証するものであるため、片方の親が、別れた相手方に子供を会わせたくはないと考えていても、正当な理由もなく、子供との面会を一方的に拒絶することは認められてはいません。
また、離婚の際に「面接交渉権を放棄する」旨の合意をしたとしても法律上「無効」となります。
なお、この「面接交渉権」については、一方的に奪ってしまうことはできませんが、子供に暴力をふるったり、子供自身が会いたがらない場合には制限をすることができるようになっています。
「面接交渉権」については、予め決めておかなくても離婚はできますが、離婚後に改めて話し合うとなりますと難しい面がありますので離婚時に決めておいた方が良い事項です。
面接交渉権の主な取り決め事項
面会の頻度 | 月に○回、○ヶ月に○回、1年に○回 |
---|---|
面会時間 | 1回○時間程度 |
面会場所 | 特定の場所又は不特定の場所 |
宿泊の有無 | 日帰りのみか、宿泊は可か |
子供の受け渡し方法 | 子供の送り迎えの方法、交通費の負担について |
学校行事等の特別な日 | 入学・卒業・授業参観日・運動会等の学校行事への参加の有無 |
長期休暇の場合 | 春・夏・冬休みの過ごし方等 |
間接的な交流方法 | 電話やメール等の連絡の頻度 |
お小遣い・プレゼント | 面会日や誕生日の際の贈与の可否 |
面接交渉権を制限できる場合
子供に暴力をふるう危険性がある
子供が養親を実の親だと信じ込んでいる
子供が会いたがらない
子供を連れ去ってしまう危険性がある
子供に精神的な悪影響を及ぼす恐れがある
子供の離婚後に名乗ることになる名前
親の死亡等で、結婚前の戸籍が除籍となっている場合は、新しい戸籍を作らなければならない。
子供の戸籍を自分の戸籍に入れるには、②か③を選択する。
③を選んだ場合には離婚から3カ月以内に市区町村役場への届出が必要。
離婚によって夫婦関係が消滅すると、結婚で姓を変更した方の配偶者がその戸籍から出て、結婚前の戸籍に戻るのが原則となっています。
これにより、姓も結婚前のものに戻りますが、このことを「離婚による復氏」といいます。
離婚の際には戸籍から抜け出る側の方は
- 結婚前の家族の戸籍に戻る、
- 旧姓で、自分を筆頭者とする新しい戸籍を作る
- 離婚の際に称していた姓で、自分を筆頭者とする新しい戸籍を作る
のいずれかを選択しなければなりません。
仮に③の離婚の際に称していた姓を、離婚後も継続して名乗る場合には、離婚成立時から3カ月以内に市町村役場に届出をしないと、後々面倒なこととなってしまいます。
なお、この届出は、「離婚届」を提出する際には同時に提出することができますので「離婚後の姓」についても「離婚届」を出すまでに決めておくべき重要事項の1つだといえます。
子供の戸籍と姓を変更する手続について
婿養子ではない父親が親権者となって子供と生活をする場合には、姓も戸籍も同じであるため問題はありません。
しかし、母親が親権者となる場合には注意が必要です!
夫婦が離婚をしても、子供の戸籍と姓は変わりません。
このことは、子と母が一緒に生活を送る場合において、社会生活上、様々な支障が生じてしまう要因ともなってしまいます。
そこで、親権者である母親が、子供を自分と同じ姓、同じ戸籍に入れるためのに以下のような手続をとることになります。
- 離婚の際に、母親を筆頭者とする新しい戸籍を作る
- 家庭裁判所に、子供の氏の変更許可を得る手続をとる
- 変更許可を得た後に、子供を母親の戸籍に入籍させる
この手続に関しては、母親が離婚時の姓を名乗っている場合についても同様です。